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  箱 の 開 け 方 − boy's side





「雨。」

 誰かの一言で、皆が一斉に窓の外を見る。
 ざわつく教室に、教師は諦めたように立っている。六限で終業も近く、既に授業中という意識は飛んでいる。
 チャイムと同時に、礼もそこそこに教師よりも早く大半が姿を消した。
 俺はゆっくり教科書を机に仕舞う。


 廊下には、放課後特有の雑多な空気が満ちていて、俺の現在の心情も相俟って落ち着かない。
 何でこんなに人が居るんだ早くどっか消え失せろ。
 無茶苦茶な八つ当たりをしつつ適当に寄り道をして昇降口に向かう。



 雨はちょっとだけ強くなっていた。
 傘があっても駅に着くまでに濡れちまいそうだ。
 別に俺は濡れても構



「南くん」



 吃驚した。



 背中が震えかけた。
 振り返らなくても誰なのか解る。


 下駄箱の横に、彼女が居た。
 予想に反して1人。


「あの、…あ、雨、降ってるね」
「そうだな」
 ……素っ気無さ過ぎたかな、今の。
 彼女は特に気にしたふうもなく続ける。
「皆あっという間に帰っちゃったね。あたし黒板消してて、後ろ向いたらもう誰もいないの」
 え。
「桜井1人でやってたのか?」
「うん、ユキ傘なかったから」
 一緒だと思った。
 あぁくそ、もう少し待っててみるんだった。
「あれ、南くん、部活は?」
「雨天により休み」
「そうなんだ」
 俺の言葉をすんなり信じたみたいで、桜井は軽く頷いた。
 気づいてない、のか。
「じゃ、もう帰るの?」
「…あぁ、でも、な」
 先刻までは、雨降りなんて予定になかった。
 地球に文句言っても仕方がない。
 桜井も折り畳み傘持ってるし、


「ね、良かったら、入ってかない?」


 本音を言おう。
 今度こそ心臓が跳ねた。
 咄嗟に声も出ない。
 息しとけ息。
 死ぬぞ。


 頭ん中グルグルしながらどうにか頷くと、桜井は嬉しそうに笑って傘を開いた。



 嘘吐いて、ごめんな。
 部活は休みじゃないし、傘も持ってる。



 折角訪れたチャンスを潰す気はないんだ。









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